はじめに
2018年1月11日、愛知県で生後11ヶ月の次男を母親が畳に叩きつけ、死なせてしまった事件が起こりました。
そして、2019年3月15日、懲役3年6ヶ月(求刑6年)という執行猶予なしの実刑判決が言い渡されました。
虐待は良くない。でも
もちろん、死んでしまうほどの力で乳幼児に危害を加えることは良くないことです。
しかし、子供を育てたことのある人ならわかると思いますが、どんなに可愛く、愛おしい我が子でも子供が嫌になるときだってありますし、離れたい放置したいときだってあります。
そのような時、誰も支えてくれなかった場合、どうなるでしょうか?
人間は過度なストレスが加わると、正しい判断ができないほどに壊れてしまいます。
今回の件では毎日のように虐待していたわけでもありませんし、行政は多胎児とその親御さんへの支援を全くせずに、このような判決となってしまったこと、私は納得出来ないと考えています。
母親の疲弊
私には1歳になった双子の我が子がいますが、ここにもう1人いたらって思うと何ができて、何ができないのか、三つ子の育児どがれだけ大変なのか私には図りしてません。
当時の母親の状況としては以下のような状況でありました。
- 毎日睡眠時間は1時間
- ミルクは1日24回
- 3人とも低体重児
- 産後うつ状態
- 次男の成長が他に比べ特に遅かった
- 赤ちゃんの鳴き声で動機がしていた
母親は相当疲弊していたことが明らかにわかります。
上記には記載がありませんが、オムツ替えが1日あたりおよそ45回ほどあったと思いますし、洗濯やお風呂、着替えなども含めると、相当な時間を育児に費やしていたことがわかります。
- ミルク:24回×30分=12時間
- オムツ替え:45回×5分=4時間
- お風呂:3回×30分=1.5時間
上記の単純計算だけでも18時間くらいを要していますし、さらにはそれぞれの準備や寝かしつけ、洗濯や片付けも必要になりますので、睡眠時間が1時間ということも頷けます。
これは、会社で働いている方の場合、自殺してしまう人が出てしまうどの状況であり、労災認定される状況です。
もし、虐待という最悪の結果を取らなかったとしても、もしかしたら、母親が自殺してしまう、といった状況になる可能性だってあり、常にギリギリの状態で日々生きていたということがわかります。
頼る人がいない状況
親族の支援
両親は飲食店を経営しており、自営業ということから頼ることができない状況でした。
旦那さんに関しては、育休を半年取得していましたが、オムツ替えを失敗したり、抱っこしたら子供が泣いてしまったりしていたため、母親からしたらたよしなかったのでしょう。次第に頼らなくなってしまい、イライラが募っていったそうです。
父親としても、子育てははじめての経験でどのようにしたら良いのかわからないのが事実です。
私もオムツ替えを失敗したことだってありますし、双子の服を間違えて着せてしまったこと、哺乳瓶を間違えてしまったこと、ミルクの量が2人で違ったので量を間違えてしまったことだってあります。
そこは、母親にとってももう少し寛容に見てあげて、少しでも力になってもらったほうが良いとは思いますが、産後のホルモンバランスが乱れている状況で、普段よりもイライラしてしまっていたのでしょう。
そのような状況で、母親としては『私がやらなければ』という責任感も重しになり、余計ストレスを感じていたことと思います。
行政の支援
母親は出産前に子育ての不安を行政にそうっだんしていました。
しかし、市役所の対応としては『パンフレットを渡すだけ』という、全くもって支援をしない状況でした。
また、産後に保健師さんにも助けを求めたのですが、『ファミサポを勧められた』だけでした。
ファミサポを活用することで、自宅にサポーターの方が来てくださり支援してくれる制度ではありますが、ファミサポを利用するに当たりお子さんを連れて面談に行かなくてはいけません。
1歳未満の三つ子を連れて外出することなんて、母親1人では到底できません。
そんな、力にならない行政、マニュアル通りの対応でそれぞれの家庭にあった支援をしない保健師も頼れない状況だったことがわかります。
執行猶予を求めるオンライン署名
そんな、旦那さんは積極的に育児をしない、行政は多胎児に関する支援・対応をしない、保健師も全然理解してくれないような状況で、産後うつ状態の母親の実刑判決は重すぎる、執行猶予を設け、2人の子育てをしながら罪を償っていくということを認めてもらえるような署名活動が発足しています。
虐待について考える
今回は残念な事件ではありますが、このことから虐待について、どのようにしたら防げるのか、明日が我が身ではありませんが、自身が虐待をしないためにも、家族の方が虐待をしないためにも、そして、虐待によってなくなってしまう命をなくすためにも、今回考えてみました。
虐待とは
虐待と言っても様々なものがありますが、ここでは児童虐待、さらにその中でも身体的な虐待について考えていきます。
身体的虐待とは、保護者が子供に対して、殴る、蹴る、お風呂に沈める、などの子供の身体に直接的な影響を及ぼすものを言い、見た目でもわかるものが多いため、周りの人も気づきやすいことが特徴です。
なぜ虐待をしてしまうのか
今まで大切に育ててきた我が子、とっても愛おしく大切な我が子なのに、なぜ虐待をしてしまうのか、その原因となる理由は1つだけでは無いことが多く、様々な原因や問題が重なることで、保護者に過度なストレスが加わってしまい、耐えきれず爆破すしてしまうことが主な原因です。
主な原因一覧
- 育児の不安
- 過去に虐待されていたことから虐待をしつけだと考える
- 病気などによるストレス
- 精神的不安定
- 子どもの成長が遅い
- 子どもの病気
- 子どもが言うことを効かず、泣き止まない
- 経済的な不安
- 頼れる人がいない
- 両親や、夫婦の関係が良くない
これらは、子育てをしたことがある人なら誰しもが1つは経験があることでは無いでしょうか。
この中の1つだけでも、不安で眠れなくなるほどのストレスを感じてしまうものもある中で、複数が同時に起こった時、あなたは耐えられますか?
そういった、ストレスのかかる原因が複数組み合わさった時、耐えられずにその場にいた我が子にあたってしまうことがあります。
夫婦喧嘩だって同じです。
普段は耐えられる些細なことでも、様々なものが組み合わさったり、積み重なったりしていた時、つい強くあたってしまうという経験をしたことがある人もいると思いますが、虐待をしてしまう方は、毎日のように子育てをしており、常に子どもと一緒にいます。
そのため、どうしても子どもに対してあたってしまう可能性が多くなってしまうのです。
これは、誰にでも起こしてしまう可能性があり、育休などで子育てをしている方だけでなく、家計のため仕事に出ている方にとっても、会社でのストレス、夫婦間でのストレス、さらには子どもが寝てくれない、泣き続けている、などと言った、些細なことでも様々なストレスが組み合わさることで、誰にだって虐待をしてしまう可能性が存在します。
行政のサポート
まず、国として定まった具体的な子育て支援の制度はなく、住民票上の市区町村に任されているのが現状です。
そのため、地域によって支援の制度、内容が異なっています。
ここでは、比較的多くの地域で実施している育児をサポートしている事業について紹介いたしますが、具体的な内容に関しては、住民票の登録されている役所に問い合わせをお願いいたします。
- ファミリーサポート
- 保健師による家庭訪問
- 一時預かり
- 子育て交流会(イベント)
ファミリーサポート
ファミリーサポートとは、地域の子育て世帯を支える目的で、保育園への送迎、子どもを預かってくれる、などといったこと支援してくれるサービスです。
しかし、会員でなければ利用できず、事前に会員登録が必要です。
また、支援してもらうだけではなく、子育て経験などを活かし支援することできるような制度です。
子どもを預かってほしい場合や、サポートをしてほしい場合、1時間単位で費用がかかってしまいますが、ベビーシッターやその他民間の支援サービスに比べると安価な設定となっているこのも特徴です。
しかし、会員登録時に、決まった場所での面談や講習を受けなければならず、小さいお子さんを育てている家庭、さらに多胎児の場合は会場まで行くことが難しいことが課題となっているケースも多いです。
産後の保健師による家庭訪問
産後28日以内、里帰り出産などの場合は60日以内に保健師などが家庭に訪問し、適切な指導を行う必要があると、法律で定められています。
そのため、出産した直後、保健師などが家庭に訪問し、子育てへの不安を聞いてくれたり、アドバイスなどをしてくれます。
しかし、法律で決まっていることは1回の訪問までで、その後の訪問が必要と判断されれば再度訪問する場合もありますが、その基準は各自治体や訪問した保健師に任せられています。
一時預かり
一時預かりとは、一時的に保育施設に子どもを預けることのできる制度で、就職活等や休養、リフレッシュなどの時間を作ることができる制度です。
託児所のような感じで、利用料金や利用可能時間などは各保育施設によって異なりますし、事前登録や予約が必要な施設もあれば、当日任せることができる施設もあり、施設によって異なります。
子育て交流会
自治体や産婦人科、病院、さらには民間でも子育て世帯を支えるような交流会がございます。
例えば、沐浴講習、多胎児向け交流会、低出生児向け交流会、歯磨き講習などなど、様々交流会がございますが、これも地域によって大きく異なりますので、自治体のホームページなどで確認をしたり、産婦人科のパンフレットなどで確認をしたりしてみると良いと思います。
行政や自治体、地域のサポートでは不十分
行政や自治体、地域でもサポートはしておりますが、十分かと言われると十分でない地域は多く存在しています。
もちろん、子育て支援に非常に手厚く活動を行っている地域も存在しますが、サポート内容としては、健康な単体児をメインとしている場合が多く、ストレスを抱えやすい多胎児や障害や病気を持っている子ども向けのサポートは殆どないのが現状だと考えます。
ファミサポも一時預かりも、子どもを連れて出かける必要があり、特にストレスを抱えている場合は出かける気力すら無いことが多くあります。
また、地域の交流会も子どもを連れて行く必要があり、そういった交流会にも行けず、サポート支援もしてもらえず、孤独になっていき、さらに精神状態の悪化し、虐待に繋がる可能性は多くあります。
よく『虐待する親は交流会にも来ないし、ファミサポなども利用しない、育児に積極的じゃない』という言葉を聞きますが、交流会にも行けないし、ファミサポなども利用できない場合がほとんどで、育児に積極的で子育てをしているからこそ行くことができない場合だってあるのです。
行政以外のサポート
行政以外のサポート、例えば、夫婦での支え合い、旦那さんのサポート、親によるサポート、民間の育児支援サービスの活用などがございます。
また、適した様々な道具も販売されており、そういった道具を活用することも1つの選択肢だと考えます。
1人で育児をしていると、まる1日という休みはなく、休める時間と言っても、1日あたり細々とした時間が数時間ある程度、そんな状況が毎日続けば人間はこわれてしまうと考えます。
労働者の過労死ラインは1突き当り80時間の残業が区切りとなっており、1ヶ月あたり240時間の労働が過労死のラインと言うことになります。
育児の場合、1日あたり15時間育児をしたとして、1ヶ月30日で考えた場合、450時間働いていることと同じであるということができ、明らかに過労死ラインを超えていることがわかります。
それだけ働いていれば、精神疾患になっていても不思議ではなく、家族がその危険を察知し、支えていく必要があることは間違いないです。
家族の支援
育児は、ママだけでもなくパパだけがやるものでもないと考えます。
もちろん、家庭の分担によってルール決めする場合もあるとは思いますが、だからとって丸投げしていいものではなく、協力する必要があります。
例えば、パパは仕事に一生懸命で、ママは専業主婦で子育てをしている場合、
パパはお金を稼ぐというとても大切な仕事をしています。
しかし、ママは家事をしながら節約をするという仕事に加え、子供がいる家庭の場合育児という仕事が加わります。
これは単純に考えると、ママがダブルワークをしていることと同じで、さらに休日というものがない場合、明らかな過労状態だと言えます。
パパだって、ママの精神が不安定になることも、子供に対して虐待をすることも望んでいるわけではないはずです。
どっちが偉い、すごいといったことではありませんが、ママが過労状態なのであれば、家族としてリフレッシュするように時間を作ったり、虐待をしてしまう前に気づき、怒らないような対策をするといったことがとても大切になってきます。
もちろんこれは逆にも言うことができ、家計のお金のため、パパがダブル・トリプルワークなどで明らかな過労状態である場合、精神疾患により仕事の休職や退職、子供への虐待などをする可能性だってありますので、どこかでリフレッシュをするなどストレスを抜かないと人間はこわれてしまいます。
お互い、精神疾患になってしまうことも、子供への虐待をパートナーがすることも望んでいないはずです。
そうならないため、家族が異変にいち早く気づく、意見が起こりそうな状況に気づき、対策をすると行ったことがとても大切となってきます。
ここでは、夫婦としてしか記載しておりませんが、夫婦だけでなく、兄弟、両親、その他家族に対しても言えることですので、子供に対して虐待を起こしてしまわないような対策を心がける必要があります。
多胎児だからこそ
我が家は双子がいますが、多胎児だからこその問題もとても多くあります。
まず、双子になるだけで、妊娠や出産のリスクが大きく増加しますので、それだけ、精神疾患、いわゆるうつ病になる可能性が高くなります。
(単体時だからといって安心、リスクがないというわけではありませんが、一般的に多胎児になることでリスクが高まるということをここでは記載しています。)
産後だって1人に比べ、授乳の回数も倍になりますし、泣く回数も泣いている時間も、夜泣きの回数も、オムツ替えも、全てが2倍になります。
1人でさえ、子供が泣き止まない、うるさい、頭がじんじんするといった方がいらっしゃいますが、双子の場合、1人だったら耐えられたけど2人になることで1日中鳴き声が聞こえている、といったことだったあり、産後うつになる可能性が増加します。
さらに、多胎児の交流会、育児支援交流会だって乳幼児2人を連れて1人で出歩くのは困難で、予防接種なども大人2人で連れて行く必要があります。
また、育児費用だって単純に考えると2倍かかりますので、家計の負担にもなり、お仕事を頑張っている方にとってもプレッシャーが加わり、夫婦はお金の話題でギクシャクしてしまいがちです。
そうなれば、お互いが余計にストレスを感じてしまい、子供への虐待にもつながってしまう可能性もあります。
多胎児の育児は、単体時に比べより虐待へのリスクが高くなりがちですので、夫婦での協力、家族での協力が不可欠です。
最後に
最後になりますが、虐待は絶対にやってはいけないことです。
どんなことがあってもやってはいけないことです。
しかし、いくら頭では分かっていたとしても、精神的に壊れてしまった場合、抑制が効かずについやってしまう、今までは一度も虐待をしていなかったとしてもたった一度の過ちで悲しい結果となってしまうことだってあります。
そのような、悲しい結果を招かないため、家族や夫婦での協力が不可欠ではありますし、さらには行政としても支援が必要なものだと考えます。
現在、多胎児への行政の支援はほとんど意味を成していないような状況で、多胎児の割合が増えているような状況であるため、今後はより一層の行政の支援も必要になってくるとは考えています。
しかし、頼りっきりではいつまで待てばよいのかわかりませんので、自分自身が今何ができるのか、どのようにしたら子供への虐待を防げるのか、考えて行動していく必要があると考えています。
1人でも多くの生きようとしている命を救えたらと思います。
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